リスク・マネジメント

リスクの定義

リスクとは、何か行動を起こした後に得られる将来の結果の不確実さに過ぎず、だからこそ、企業成長の源泉であるといえるのである。

例えば、20階建てのビルの屋上から飛び降りると仮定とする。この場合の、リスクとリターンであるが、もし、「リスクは大きく、リターンはゼロ」と考えるのならば、それは「損失がリスク、利益がリターン」という勘違いを起こしているといえる。

リスクは、損失のことではない。「何か行動を起こした後に得られる将来の結果の不確実さ」であり、「リスクを取る」とは、「不確実なことを行う」という意味となる。また、リターンは、リスクを取った結果であり、良い結果が、プラスのリターン、悪い結果がマイナスのリターンとなる。

先の20階建てのビルの屋上から飛び降りる例でいえば、リターンに対する不確実さはほぼゼロに近い。つまり「リスクはゼロ、リターンは絶対値の多きマイナス」となるのである。しかし、平屋建ての屋根から飛び降りた場合では、死ぬかもしれないし、骨折して重体かもしれないし、無傷かもしれない。その場合、リターンの変動幅は大きく、不確実さつまりリスクは大きいものとなるのである。

不確実さの本質

さて、不確実さは将来何が起こるのかという問いに由来することが多い。しかし、この問いに答えることは、一種のパターン化した「大半の部分」について可能であるだけで、正確な解は存在しない。我々は、「不確実な状況の中で、いかに優れた意思決定を下すか」を問題とすることができるだけである。

しかし、実はここには一つのパラドックスが存在するのである。意思決定を下すから、不確実さが高まるということである。人間の本質は変わらないため、行動や意思決定をせずにそのまま放置していれば、何も進展しない。しかし、それと同時に、人間は過去の経験と技術から学習する生き物である。過去の対応は未来の対応へのヒントとなり、成長するのである。

つまり、不確実さは、他者がこれから下す意思決定の中身であると同時に、それに対していかに最善の策を講じられるかという自分自身の意思決定の中身でもあるのである。

リスク・マネジメントの定義

我々は、自らが意思決定するから、不確実性が高まるというパラドックスに陥っている。しかし、確率論が意思決定のツールにしか過ぎないとしても、手元にある情報の多くは不正確か不完全のものであるという前提のもと、これから起こること、あるいは少なくとも既に起きた結果をコントロールすることは十分に可能である。

リスク・マネジメントとは、コントロールできる領域を最大化し、原因と結果の関係が見えない、つまりはコントロールできない領域を最小化することであるといえる。

経営のリスク・マネジメント

経営においては、様々なリスクが散在している。マネジメントの視点からは、「ヒト・モノ・カネ」はもちろん、顧客・流行のリスク、社会的責任という要請からのリスクなど。企業にとって「不確実さ」たるリスクは、成長の源泉であり、継続的成長には欠かせないものである。欠かせないものである以上、リスクを取らないわけにはいかないが、取りすぎるのも危険である。

そこで、考えうるリスクとそのリターンの変動幅を出来る限り定量的に把握し、リスクを取った際の最悪の事態を、受け入れることが出来るか否かの意思決定を下す(そのリスクに見合っただけのプラスのリターンが期待できるかも、考慮されなければならないのは当然である)。それが、リスク・マネジメントの第一歩である。

そして、リスクを取った際に、想定した最悪の事態が発生した場合には、直ちに撤退の判断を下すことも重要である。リターンの損害最小化やさらなる悪化を防止するための策は事前に考慮されていなければならない。

また、リスクを取ったことにより失敗した場合、つまりは、マイナスのリターンとなってしまった場合には、失敗の根本原因追及、再発防止策の考案を行い、次につなげることもリスク・マネジメントの重要なポイントとなる。

リスク・マネジメントのプロセス

リスク・マネジメントのプロセスは、次のようになり、その循環によりリスクの最小化を図ることができる。

  1. 事前予防:リスクを予想し、その予防策をとる。
  2. 応急処置:リスクが発生してしまった場合、その損害を最小限に食い止めるための対策を講じる。
  3. 再発防止:そのリスクに対し、再発防止、また再発時の損害最小化に向けての対策を講じる。

具体的な行動としては、下表のようにまとめることが出来る。

事前予防とその対策

  • シナリオブランニング
  • リスクコストの計算

応急処置とその予防

  • 初動対応
  • 有事の指揮命令系統の整備
  • 紛争処理コストの計算
  • 対応マニュアルの作成

再発防止とその対策

  • 危機発生原因の解明とフィードバック
  • リスク処理コストの計算

リスクは、出来うる限り定量的に把握した上で、それでも発生する危機に備えて十分な対策と体制を整える必要がある。その対策を効果的に発揮できるように、特に、危機管理に関しては、次のようなことを決定しておくことも必要である。

  1. 有事の意思決定の一元化・迅速化
  2. 経営トップの変革のリーダーシップ
  3. 普段からの危機管理に対するルールや判断基準の共有化

参考文献

history of update
ver.1.00 2005.01.06 opened to the public.

「知の経営」推薦図書


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