百貨店について

流通の役割

まず、流通とはどういうものか簡単に触れておこう。簡単に言えば、流通の役割は「生産と消費の間を埋めること」である。生産と消費の間には自給自足でない限り、隔たりが存在する。それは、生産する場所と消費する場所(場所的隔たり)、生産する時間と消費する時間(時間的隔たり)、生産する人と消費する人の隔たり(人的隔たり)である。自給自足の経済においては、そのような隔たりは限りなく無に近いが、現在のグローバル経済においては、これらの隔たりを埋める経済的機能が必要となり、それを担うのが流通なのである。

場所的隔たりを埋めるためには輸送を中心とした活動が行われ、時間的隔たりを埋めるためには保管を中心とした活動が行われ、人格的隔たりを埋めるためには取引を中心とした活動が行われる。これらの活動を流通活動という。その中の一つとして、百貨店は位置づけられる。

百貨店とは

百貨店という言葉の定義を明確にするのは容易ではない。世界初の百貨店は、1852年にフランスにできたボンマルシェであるといわれる。日本では、1904年にデパートメントストア宣言をした「三越呉服点」がデパートの始まりである。しかし、本来英語のデパートメントストアには百貨店という意味はなく、直訳するなら部門別小売業ということになる。「百貨店」という言葉は、言葉自体から判断するに「百貨の店」となり、それは、大手量販店も百貨店的な店の展開をしているといえ、その意味で、境界線は非常に曖昧である。

百貨店の歩み

百貨店は世界中の主要都市のダウンタウンに巨大な店を構え、それぞれの時代の消費をリードしてきた。日本では、高度経済成長を通じて、人々の生活が豊かになる一方で、百貨店には、常に人々の消費意欲をそそるような商品が次々に並び、それは、華やかなファッション製品、海外の高級家具、素材の優れた食材、趣味の良い宝飾品などの高級商材であった。

しかし、大手量販店の総合化、集積化が進み、さらに、ディスカウントショップや無店舗販売などの様々な流通形態が登場する中で、「百貨店は既に過去の業態」との陰口も聞かれ、百貨店業界も大型再編、淘汰の時代に入っている。

百貨店を囲む経済構造の変化と百貨店らしさとは何か

現在百貨店を囲む経済構造の変化が次の5つにまとめることができる。

このような変化の中で、百貨店はどのようにすれば生き残れるか、答えは簡単で、差別化を図るということである。そのためには百貨店らしさを強めていくことが重要あるといえる。では、百貨店らしさとは何か、それは、次の5つにまとめることができる。

しかし、「百貨店」のあるべき姿は一つではない。これらは、百貨店が差別化するための要因であり、百貨店の中ではさらに企業ごとの差別化が必要なのは当然の理であるといえる。例えば、人口の空洞化による都市構造の変化に対応するため、都市型小売業ではあるが、「郊外に出店するかどうか」は難しい判断を迫られるところであるし、また、その出店に際しては住宅街という出店立地に起因して百貨店の形態をそのまま持っていけるかの判断も難しいところであるだろう(後者においては、場合によっては大手量販店と変わらない形態になってしまう可能性を否定できない)。

魅力ある空間を作る

人々は、常に何らかの刺激を必要としていて、今人々を集めている小売業はこうした刺激と「三分間の幸せ」を持った空間を提供できる場だといわれる。例えば、フードコートにいけば、世界中の食文化を味わえるとする。それは決して本物ではないかもしれないが、本物を味わうためにはそれなりの時間とお金がかかることを考えるのであれば、身近なところで、刺激と「三分間の幸せ」が味わえることには魅力があるといえる。百貨店は、そのような「空間」を創造しなければならないし、本来得意分野のはずである。人々に見事に商品を編集して見せ、消費の楽しみを刺激し、そしてライフスタイルと提案する。それが百貨店に求められているといえるかもしれない。

百貨店は戦前戦後を通して、大きな変化を繰り返し、時代に合わせて変化を続けてきたからこそ、百貨店が現在まで存続し続けてきた最大の要因であると言われる。今、再び、百貨店は自らの姿を変えようとしているのである。

<参考文献>

history of update
ver.1.01 2004.09.24 誤字訂正。
ver.1.00 2003.10.19 opened to the public.

「知の経営」推薦図書


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